ホーム>知られざる名曲>グリエール 交響曲第1番
グリエールを聴き始めるきっかけというのはほとんどないのだろうか?周知の通り私は大のプロコフィエフファンであるが、そのプロコフィエフの最初の作曲の先生としてこのグリエールの名前を知ったのだが、それ以外で彼の名前を聞いたことはない。1875年キエフに生まれたグリエールはプロコフィエフよりも長く1957年まで生きたわけだが、彼の作風は完全にロマン派の伝統に沿っている。非常に情感豊かな曲を書く人で、晩年のプロコフィエフがロマン派風の曲を書くようになったのもグリエールに教わった影響が大きいのではないだろうか。
グリエールは交響曲を3曲残しているが、この第1番は彼がまだモスクワ音楽院に在学中の1899年に書き始められ、卒業した翌年の1900年に完成している。曲の雰囲気としてはチャイコフスキーやラフマニノフといった西欧風の作風だが、彼らの曲のような甘美な旋律というよりはもっとロシア的な素朴な旋律によって構成されている。後に社会主義国家となってから『わかりやすくしかも陳腐でない音楽を』という社会主義リアリズムに沿った方向性によりショスタコーヴィチやプロコフィエフが批判されていた時期にグリエールの音楽は非常に賞賛されたというのもうなずける。
チャイコフスキーやラフマニノフのような音楽を期待して聴くと少し期待外れかもしれない。かといってボロディンやムソルグスキーといった雰囲気でもない。私が思うにドヴォルザークのような曲が好きな人ならこの曲を気に入らないということはないのではないか。素朴だが情感あふれ重くなく躍動的といった特徴が両者に共通するように思える。
参考CD
スティーブン・ガンゼンハウザー指揮 スロバキアフィルハーモニー管弦楽団 NAXOS
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