このサイトについて 『クラシックMIDI』目次 知られざる名曲 コミュニケーション目次 『リンク集』目次

クラシックの次世代標準を開拓

you are the th visitor

ホーム知られざる名曲>ルクー バイオリン・ソナタ


 ルクーという名前は一部のマニア以外にはほとんど知られていない。しかし彼も数多いフランクの弟子の1人である。その割にはダンディやショーソンほど名前が知られていないが、それは彼が24歳という若さで生涯を終えたからに他ならない。そのため彼の曲には若さゆえの曲の構成上の未熟な点が見られるが、その代わり旋律の美しさは超一級品だ。また非常に自尊心の高い人だったようで、彼がローマ大賞に応募したカンタータ『アンドロメダ』が2位に入賞したとき彼はそれを受け取ろうとしなかったという。それだけ自分の作品に自信があったのだろう。いずれにしても大作曲家の素質があったのに若くして亡くなったのは非常に残念だ。

 この曲はルクーが22歳のときの作品だ。他の作曲家では20代の頃の曲などあまり相手にされないが、彼にとってはこれが晩年の作品なのだ。とはいってもほとんど習作に近いような曲、曲の構成や記譜法にかなりの未熟さは見られるが、その旋律の幻想的な叙情性は彼の師フランクのバイオリンソナタを上回っているように思える。特に2楽章の渋さはとても20代の青年が書いたものとは思えない。その旋律はフランス的といえばフランス的だが、もともと彼はバッハやベートーヴェン、ワーグナーに強い感銘を受け、そしてブラームスの影響を受けた師フランクの影響もあってか芯の強いはっきりしたものである。

 『フランスものはちょっとねぇ…』という人にぜひ聴いてもらいたい。フランス物が苦手な人は大抵その透明感ある何気ない旋律に物足りなさを感じたり、特殊な和声についていけなくなるということが多い。しかしこのルクーのソナタに関してはそんな心配はいらない。フランス物は苦手だけどフランクのソナタは好き、というならなおさらだ。そもそもルクーもフランクもフランス人ではなくベルギー人だ。ドイツ物とフランス物どちらの支持者も共感できるものはあるだろう。

参考CD
アルトゥール・グリュミオー(Vn) PHILIPS