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バイオリン・ソナタ
フランク派の作曲家はどうもあまりよい死に方をしていないようだ。ショーソンは自転車事故、ルクーは腸チフス、そしてこのマニャールに至ってはドイツ軍に家を焼かれて焼死である。実に惜しい。本来ならもっと長生きして優れた作品を多く残したはずの人が。よせばいいものを、彼は銃を片手にドイツ軍に抵抗した。そんな彼の不屈の意志が彼の作品にもよく表れている。ちなみにフランク派とはいっても彼はフランクに教わったわけではない。主にその弟子のダンディに師事したわけだが、彼の曲には師ダンディはおろかフランクさえも凌ぐほどの内容を持つものもある。
特にこのバイオリンソナタはフランクのそれに匹敵すると言っても過言ではない。何がそう感じさせるかと言うとやはり整理された曲の構造だろうか?この曲の場合、旋律よりもむしろそれより小さな部品、すなわち『動機』が印象に残る。そしてそれらいくつかの『動機』の結びつきにほとんど無理を感じない。あたかも完成されたドイツ音楽を聴いているかのように曲の構造を見てしまう。このような芯の強い旋律もフランス音楽ではあまり見られない。しかし微妙な揺れ動きを見せる和声はいかにも後期ロマン派のフランス音楽だ。
上記の通りこの曲はかなり聴きごたえがある。それどころかなかなかに密度の濃い曲であるから、軽く聴き流せるような曲ではない。何しろ全部で45分というバイオリンソナタとしては他に類を見ないほどの時間を要する曲だ。聴くにはそれなりの覚悟は必要だろう。とりあえずフランス物の透明で神秘的な響きに飽きてきたあなたにおすすめする。
参考CD
オーギュスタン・デュメイ(Vn)
ジャン=フィリップ・コラール(P) 1989年録音 EMI
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