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ピアノ協奏曲第2番
メンデルスゾーンは史上最も恵まれた作曲家といわれている。確かに彼の家庭は裕福で彼が才能を伸ばすのに何の障害もなかったといえる。少年時代から作曲をし、それを家のオーケストラで演奏してもらうなどという話、他では聞いたことが無い。
ところで彼は古典の曲を発掘、研究した人としても知られている。当時忘れ去られていたバッハの『マタイ受難曲』やベートーヴェンの『バイオリン協奏曲』など今日頻繁に耳にする機会が多いのは彼の功績によるところが大きい。そしてそれらが彼の作風に与えた影響というのもかなりの大きさだ。実際彼の同時代の作曲家ショパン、シューマン、リスト等と比べると彼の作品は明らかに古風な趣がある。そのなかに彼の繊細なロマン派の感性が見事に溶け込んでいて、それがメンデルスゾーンの人気の秘密であろう。
メンデルスゾーンといえばバイオリン協奏曲が押すも押されもしない名曲だ。これは当時の大バイオリニスト、フェルディナント・ダヴィットの助言(あるいは合作に近いかもしれない)によって完成された。しかし彼はピアノの名手。彼がシューマンらと共に設立したライプツィヒ音楽学校でも彼はピアノと作曲を教えていた。そして彼はピアノ協奏曲を4曲作ったと伝えられている。いずれもメンデルスゾーンらしい、高雅で魅力的な甘美さと適度な感傷性をたたえた美しい作品だ。そのなかで私の一押しはこの2番だ。1楽章にはバイオリン協奏曲や『スコットランド』交響曲のような憂いを含んだ哀愁の響きがある。そして2楽章のアダージョはメンデルスゾーンが書いた最も美しいアダージョと断言してもいい。3楽章は一変してメンデルスゾーンお得意の妖精が跳ね回るかのような軽やかなロンドだ。ここまでメンデルスゾーンの個性がはっきり出た曲というのもなかなか無いものだ。
メンデルスゾーン・ファン必聴!!ピアノ協奏曲といっても同時代のショパンやシューマンのもののようにヴィルトゥオーゾ性を追求したものではなく、まさに『無言歌集』をそのまま協奏曲にしたようなきょくであるから逆にメンデルスゾーンをあまり好きでない人には物足りないかもしれない。
この曲を聴いたら1番も聴いてみてもいいかもしれない。こちらのほうがやや『元気』な感じだ。
参考CD
アンドラーシュ・シフ(P) シャルル・デュトワ指揮 1982年録音 DECCA
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