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ホームクラシックMIDIMIDI TIPS>音の特性とパンニングについて


■見かけの位置と音の指向性
 音にステレオ効果を与えるパンニング、皆さんはこの値をどのように決めているでしょうか?おそらくほとんどの方は舞台上の配置そのままに値を割り振っていると思います。しかしそれでいいのでしょうか?楽器の配置はそのまま音の聞こえてくる方向に一致するものなのでしょうか?

 問題を簡単にするために左図のような舞台上にバイオリンとコントラバスのみがある状態を考えてみましょう。下手な絵ですがほっといてください(笑)。一応絵の説明をします。聴いている人は客席中央にいます。そこから舞台中央をはさんでバイオリンとコントラバスは同角度、同距離に位置するものとします。
 この状態でpanpotを割り振るとしたら、仮にバイオリンが44の場合、普通に考えてコントラバスは84ということになります。しかしこれでは間違っていると言わざるを得ません。
 何故間違っているのか?それは音の周波数による特性を考慮していないからです。一般に音波は周波数が低いほど回り込みやすく、高いほど回り込みにくくなります。つまり何が起こるか、順を追って考えてみましょう。

 バイオリンから音が発生し、その音は空気中を伝わりまっすぐ左耳に入ってきます。この間は遮るものが無いためほぼ直線的に耳まで伝わると考えて良いでしょう。それに比べ右耳には直線的には音は届きません。なぜなら頭によって直線が遮られているからです。音が右耳に入るためには頭を回りこまなければならないのですが、周波数の高い音はここでエネルギーを消耗してしまいます。結果として右耳に入る音の大きさは左耳に入る音よりも小さくなります。これにより脳はその音源は左側にあると判断し、指向性を認識します。
 ではコントラバスの音はどうでしょう?バイオリンの場合と同じように右耳には直線的に音は伝わりますが、左耳に音が伝わるためにはやはり頭を回りこまなければいけません。しかし周波数の低い音は回り込むときにそれほどエネルギーを消耗しません。すると、左右の耳に入る音量の差はバイオリンの時ほど大きくはならないのです。

■どう設定するか
 ではコントラバスの場合はパンを中央寄りにすれば良いのかというと、それで全て解決というわけではありません。と言うのは、全ての音波が同じ経路を辿って耳にたどり着くわけではないからです。どういうことかというと、頭を一周して右耳に入る音もあれば、床を這うように伝わってきて座席の間から伝わる音もあるのです。もちろんそれらは直接届く音や頭を回り込んで左耳に伝わる音に比べればずっと小さなものですが、それらが全て耳に入ることにより音像はぼやけ、それらを全て平均化した方向は見た目の位置よりも中央寄りになるものと思われます。金管アンサンブルを聴くとチューバの音が全体を包み込むように聞こえるのはこのためです。
 音像をぼやけさせるにはReverbを強めにかけるのが良いでしょう。また、エクスクルーシブでリバーブ・ローパスフィルタ(標準:64)という便利なものがありますが、これを大きめに設定することによりリバーブにおける低音の割合を増やすことができます。

■例外
 よほど広い部屋でスピーカーを鳴らす場合はスピーカーから出た低音が回り込むのでこんな設定をする必要はないでしょう。自宅に大ホールがあってそこにスピーカーを設置するという方(いないね・・・)はリバーブもいらないでしょう・・・。しかしヘッドホンを用いて聞く場合は明らかに音の回り込みなど生じませんからこのような対策が必要になると思います。ちなみにうちのMIDIでこれを実践したものはまだありません(^^;

■マメ知識(どうでもいい話)
 周波数による回り込み特性の変化はなにも音波に限った話ではありません。電磁波でも同様の現象が起きます。電磁波はその周波数によって電波(長波、短波、マイクロ波など)、赤外線、可視光線、紫外線、X線・・・・などなど名前がついていますが、やはり周波数が低いほど回り込みやすいという性質があります。ラジオが室内で聞けるのはこのためです。さらに周波数が低いAMラジオのアンテナの方向を変えてもそれほど受信状態が変わらないのに、周波数が高いFMラジオのアンテナの方向を変えるとかなり影響が出ることからも実感できると思います。また携帯電話の電波の周波数は高い方なので指向性が生じてくるのですが、アンテナを垂直に立てた状態が最も受信感度が良いそうです。右耳で聞く人の場合、途切れそうになったら首を少し左にかしげて少し下を向けば多少はマシになるかも・・・(笑)